美人のために刑務所に入った弁護士(3)
生まれたのは男の子だったが、元気に育っていた。
弁護士は2家族の面倒を見るため、昼夜働いた。
弁護士業だけでは食べていけず、不動産仲介業を手伝ったり、時には夕方知っている会社の伝票整理までやっていた。
しかし困ったことに、その美人の彼女、再度妊娠したのである。しかも産みたいと言う。
弁護士の気持ちは複雑だった。
どうやってやっていこう?
...彼女の出産の決心は、日に日に大きくなっていく...
結局、産まさざるを得なくなった。
次に生まれたのは女の子だった。2500gでの出産だったが、元気だった。
狭い1LDK に赤ん坊の泣き声でうるさく、上の男の子も時々騒ぐ。
弁護士はマンションをもう少し広い部屋のところに移ろうと思った。
その事を彼女に言うと、今までの彼女はそこに居なかった。本当に別の彼女になっている感じだった。
彼女は言った。(まくしたてた)
要約すると
ー両親、兄弟姉妹には、正式に結婚していると言ってる。ー
ー子供がいるのに、私には何ひとつ財産もない。ー
ー奧さんは子供ひとりでも、田園調布に家がある。ー
ーマンションを点々とするのは、イヤです。私にも家を買ってください! 子供の為にも!ー
家を買ってください、という要求は、今までの彼女にはない強いものだった。
いつも大人しくて、若い美人の上に、良く働きもする、弁護士にとっては最高の女性だった。
弁護士という肩書きはあったが、特にモテる訳でも、いい男でもない。今考えても、こんな女性が口説けたことが、不思議なくらいだった。
ー家を買ってくださいー
で思いついたことがある。
顧客のお金を8000万円預かっていた。
弁護士だから、弁護士名義の口座に入れてある。
このお金は3ヵ月は動かす必要がなかった。
弁護士は彼女の強い要求に屈伏。
この顧客のお金で、家を買うことにした。
弁護士はヤバい気持ちもあったが、彼女は何も知らないし、彼女にとって、家探しは楽しさでいっぱい!
彼女の気に入る家は、二子玉川で見つかった。
これに8000万円ほぼ全額を注ぎこんだのである。勿論登記は
彼女名義にして。
弁護士の懐具合を全く知らなかった彼女は、弁護士が持っていたのか、借りてきたのかと思っていたかも知れない。
弁護士は、このお金を、不動産の仲介料で返そうと考えていたらしい。
そんなー1000に3つーという仕事で、多額のお金を返せる訳がない。
結局弁護士は、3ヵ月以内に返せず、業務上横領、3年間刑務所に入ったのである。
まったくスゴい弁護士、いや、はちゃめちゃなワルの弁護士、いたもんである。
(この事件は、実際あった事件で、当事者保護のため、僅かだけ内容を変更しています。)