祖父の失敗と成功
(これは欅(けやき)、大木は高価、家具などに使用)
私の家族は大部分が銀行勤務。
ところが代々長男だけ事業家。
祖父⏩父⏩私。
この話は祖父から聞いた話。
(私が大卒後すぐ事業を始めたのも、いつも父、祖父の話を聞いていたから。
今のようにIT で行うことではなく、昔だからそれはアドベンチャーに満ちていて、私の幼い心をときめかせるには充分だった。)
(数十年も前の話)祖父は、静岡や、岐阜に広い土地を持っていて、山林の売買をやっていた。栃木、群馬、長野、新潟、三重なども。
これは岐阜での話。
祖父が素晴らしい物件を見つけた。
はじめての仲介業者だったが、売り主が弁護士ということで、信用していた。
価格は4億円。おそらく面積にすると数百万坪ということだと思う。数百万坪というと、周囲を時速40kmの車で回っても、10数分くらいかかるのでは。
祖父が買ったのは桧の山林。住宅の柱にするもの。多分その山には、何万本と生えてたはず。
祖父が見た桧の木には何十本と、所有者鈴木の、鈴という字の刻印が押されていた。
祖父は諸経費(伐採、運搬などの経費)を引いても、3億円は儲けると思ったそうだ。(それまで数千万円は、何度か儲けていた。) この山林の契約書をつくり押印、代金は完済。
.............ところが....何と! この山林は、弁護士のものではなく、他人の山林。
祖父は4億円をだましとられたのである。
弁護士は4億円を詐取するために、他人の山林に、数十本か、数百本、自分の刻印を打っていたのだ。山林は所有者が滅多に現地に来ないことを利用して。
祖父は超落胆!!
当然弁護士は逮捕。逮捕した時はもう既に、お金は借金払いなどで消えていたそうだ。弁護士は詐取した金額がこの時代にしては大変大きかったため、懲役13年の刑。
しかし祖父の凄いところは、ここから。
祖父は失敗は反省したが、そんなことはすぐ忘れ、持っていた残りのお金(3000万円くらいと言っていた)で、また桧、杉、欅の売買や、宅地建物などの売買を始める。そして10年くらいで、盗られたと同じくらいのお金を作ったという。
私が幼少だったので、祖父は私には、めちゃ優しかった。
ーお父さんが買ってくれないから、これ買って!ー
と言うと、
ーじゃあ親父に内緒だぞ!ー
と言って何でも買ってくれた。
無論、もうその祖父はいない。